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ミサ曲となった荒城の月

「ミサ曲となった荒城の月」

2017年9月17日

瀧廉太郎作曲の「荒城の月」が、ベルギーでミサ曲として用いられていることをご存知でしょうか。1986年、ベルギーに滞在していた芦田竜介神父と出会って、初めてこの曲の存在を知ったマキシム・ジムネ神父は「旋律の並外れた質の高さ」を絶賛し、シュヴトーニュ修道院でのミサ曲として編曲しました。カトリック教徒と東方正教徒の融合を目指して設立されたこの修道院で、スラブ語で歌うにふさわしいと確信したのです。しかも教会の聖礼典の中で最も重視される聖餐式で、このミサ曲が歌われ、現在も年に数回賛美されているそうです。瀧廉太郎は「荒城の月」を作曲したと同じ年に、東京・麹町の博愛教会(現、日本聖公会聖愛教会)で洗礼を受けています。教会では青年会の副会長をし、礼拝の奏楽も担当していました。大塚野百合さんは、「荒城の月」は瀧が教会に通い始めた頃に作曲された曲だからこそ、曲想に深い平安が漂っているのではないかと記しています。その曲が、現代になってベルギーでミサ曲として用いられるとは不思議な主の導きを感じます。早世したため残念ですが讃美歌は残していません。しかし「荒城の月」は、彼の信仰の証しとも言えるのではないでしょうか。