MENU

他者に向かう愛

「他者に向かう愛」

2021年7月4日

一年半前、クリスチャン医師の中村哲さんがアフガニスタンで殺害されました。当初はパキスタンのペシャワールで医療活動をしていた中村さんは、干ばつで苦しむ人々を見て、医療よりも飢えと渇きを癒さなければ命を救えないと判断し、「緑の大地計画」を立ち上げて用水路の開発に乗り出しました。ちょうどその頃、日本に残していた10歳の二男の脳腫瘍が急速に悪化して危篤になりました。中村さんは直ぐに帰国して最後まで息子さんを看取りました。息子さんを亡くした翌日の朝、呆然と庭を眺めていた中村さんの目に、病気の子どもを抱えながら干ばつの中を長い道のりを歩いて診療所にやって来る母親の姿や、死んだ子どもを背負ってとぼとぼと村に帰って行く母親の姿が飛び込んできました。中村さんは亡くなった息子さんに語り掛けました。「見とれ。おまえの弔いは私が命懸けでやってやる」。中村さんの他者に向かう愛は「神が私たちを愛して、私たちの罪を償ういけにえとして、御子をお遣わしになりました(Ⅰヨハネ4:10)」、という父の愛、父の涙を中村さん自身が体験し、また自分の回りにもそれを体験している父親や母親が大勢いることに気づいたことから来たのです。